岡山/倉敷で住宅の設計・監理をしている-建築家 宇川民夫が主宰する-建築設計事務所の宇川建築計画事務所の「住宅のリフォーム」専門のホームページです。耐震性・省エネ性を重視した住宅のリフォームの実例を詳しく紹介します。
最近は住宅取得として、中古住宅を購入してリフォームされる方の設計依頼が多くなりました。
メリット
・現在では新築では工事費が高くなる住宅を安く購入できる
・気に入ったエリアで、実際にある住宅を見て、購入するか検討できる
最近ではインターネットから多くの住宅を探すことができます。
不安点
・耐久性など購入に値する住宅であるか?
・予算内に希望のリフォームできるか?
・耐震性が不安?
Kさんも大阪からUターンで岡山に帰るにあたり、住宅取得を検討され、気に入る中古住宅をいくつも探されました。購入した住宅のリフォームを決意され、リフォームに合わせて耐震診断・耐震補強も計画され、このほど完成しました。築35年の住宅ですが、キッチンやユニットバスなど水周りはリフォームされていた、本格和風の住宅です。
リフォームのご希望をお聞きして、住宅の状態を調査して設計します。
before
よく手入れされた本格的な和風住宅で程度は良好です。
地震に弱い住宅の目安として、昭和56年5月以前を境にして、住宅の耐震基準が大きく変わり、それ以前の住宅は「旧耐震」呼ばれ地震に弱い住宅とされています。この住宅は昭和60年に建てられた住宅で、「旧耐震」の住宅ではないですが、1階の南面に広い開口部があるため、ご希望のリフォームに先立ち耐震診断を行いました。
耐震診断は岡山県木造住宅耐震診断マニュアルにもとづき実施しました。
上記数字が1.0以上なら、大きな地震が来ても「一応倒壊しない」レベルですが、耐震調査の結果 1階・2階とも1.0以下であり「倒壊する可能性が高い」と判定されました。
そこで、この住宅をリフォームのご希望とともに、リフォーム箇所を中心に耐震補強計画を設計します。
1階耐震補強構造図面
和室10帖をフローリング貼りのダイニングリビングにリフォームするので、南西の隅に物入れを新たに設け、建物のコーナーを耐震補強をします。また、和室の押入れを解体して耐震補強します。
2階耐震補強構造図面
2階の外壁面を中心に構造用合板にて耐震補強します。
リフォームは物入れをなくし、階段につながる広いホールをつくります。
補強する耐力壁に合わせて、地震に対応できるように、柱と梁をつなぐ接合金物の選定が重要です。
耐震補強設計を行い、1階・2階の東西・南北方向とも「一応倒壊しない」1.0以上にします。
建物の隅に物入れを設け、耐震補強する
内装工事に合わせて、外壁面を構造用合板で耐震補強する
既存のサッシュは断熱性を高めるため、内窓を付けます
外壁面を耐震補強したあと下地ボードを貼ります
玄関や廊下、和室の壁を、調湿効果のある珪藻土壁に塗替え
ひび割れしていたポーチの外壁を塗替え
無事リフォーム工事も終わり完成ー工事期間 約2ヶ月
after
リビング・ダイニングー床は岡山で製材した無垢の松のフローリング、壁は調湿効果のある珪藻土の塗壁、天井は無垢の杉板貼り
珪藻土の壁に塗り変えた和室
耐震補強した物入れの内部
2階ホール
全面リフォームした洗面所
2階のトイレは広くして節水型便器を新たに設置
2階の洋室の窓には内窓を設置します。
窓から室内の熱が半分逃げます
住宅の断熱性を高くするには、内窓を設置するのが有効です
入居後 快適でですと、お言葉いただきました。
住宅の耐震性向上とリフォームの実例
数年前に新築住宅の設計をさせて頂いたお施主さんのご依頼で、遠方に住まれているご両親の住宅をリフォームさせてもらいました。
建物は戦後すぐに建てられ増改築を重ねた木造店舗付住宅です。
建物の耐震性に不安があり、急で狭い階段と暗くて細い廊下で母親が怪我を機に、高齢になるご両親が安心して暮らせるようにリフォームすることを決意され、住宅の調査、リフォーム計画から建設会社の選定、設計、見積徴収と工事金額調整、隣県に監理をしました。
まず初めにご希望のリフォーム内容を伺い、現在の建物の図面が残っていないので、現地調査と測量を行い現況図面を作成することから始まります。
<リフォームのご要望>
・可能な限り耐震性を持たす。
・勾配がゆるく、光の入る安全な階段を設ける。
・廊下幅を広くし、段差のないバリアフリーにする。
・洗面脱衣室を広くし、浴室もゆったりしたサイズの浴槽に変更する。
・1階土間部分に団欒できるスペースを確保し、日の入る窓や避難できるドアを新設する。
・システムキッチンを入れ替え、IHヒーター式に変更する。
・既存窓サッシのガラスをシングルからペアガラスへ入れ替え、断熱性を上げる。
・解体する工事部分の床、外壁、天井には断熱材を可能な限り充填し断熱性を上げる。
・床、壁、天井の仕上げ材を張り替える。
・使いやすい位置に1階にもトイレを設ける。
・傷みが激しかった金属屋根を修復(カバー工法)する。
・1階の外壁を塗り替える。
・店舗のシャッターを入れ替える。
・水周りなどの設備機器、電気設備は新しくする。
・1階の店舗部分は開店しながら工事を進める。 ・・・・などなど
上記のようなご要望を元に、リフォームの計画がスタートしました。
1981年(昭和56年6月1日)以前に建てられた木造住宅のほとんどは、建築基準法で定めた新耐震基準を満たしていないので、早めに耐震補強が望まれます。
リフォームの計画・設計を進めるに当たり、耐震性の状況を確認する現状調査を行い、暮らしやすいリフォームの提案とともに、耐震補強の方法も提案しました。
まず初めに不用品を処分し壁・天井から解体します。
↑上記 左の写真:以前建物を改修した時に設置された効果のない筋交いを発見ー本来入るべき位置ではない壁の中間に筋交いが付けられ、金物接合もないため、耐震性は期待できません。
↑上記右の写真:以前の改修により切断されていた柱を発見ー地震が来ると危険な状況です。
解体が進むと、効果のない筋交いや、危険な柱・梁の位置・サイズ・留め方を確認し、補強計画を再検討し、耐震性を確保します。
既存の内壁や柱を解体撤去する時には、崩壊の危険性も考慮して支柱によって既存の梁を支え、安全性を確保しながら慎重に工事を進めます。
ある程度内部の解体が終わり、既存の柱や梁のサイズ・位置を確認できる状況になると、既存の柱や梁の位置をリフォームの設計図と照合し、柱梁の補強、耐震壁を再確認し補強方法を再検討します。
・梁桁材の位置の不足・サイズが細く接合金物がない
・柱の本数が不足し火打梁もがない
事前に調査や実測し耐震計画・設計していても、既存部分を解体をしてみると、隠れていた部分では予想できない箇所も見つかります。
解体が進むと、作成しているリフォーム設計図を元に、現場で既存の柱や梁の状況を再調査し確認します。
既存の基礎の強度不足のため、基礎に沿わせて新たに鉄筋コンクリートの基礎を打ちます。
腐食した土台は新しい土台に入れ替え、アンカーボルトで基礎としっかり固定します。
既存の土台でアンカーボルトの不足している箇所は、基礎にケミカルアンカーを打ち、土台をアンカーボルトで固定します。
↑上記左の写真:以前の改修により切断されていた柱を発見ー地震が来ると危険な状況です。
新たに柱を挿入します。土台と柱、柱と梁は改修用接合金物で繋ぎます。ー下右図参照
必要な箇所には、地震時に柱が土台から浮き上がるのを防ぐため、基礎に埋め込んだホールダウン金物で柱を頑丈に固定します。
地震の上下動の揺れで、柱が土台から浮き上がるのを防止することが耐震性を発揮する上で重要です。
既存の梁で細くて強度不足の部分や梁桁が欠落している部分、新たに床や壁を設ける箇所には、専用の梁受金物を使用して、新しく梁を入れて補強します。
↑小屋部分の梁桁材は貧弱で、接合金物がない状態でした。そこで、サイズ不足の梁には新しい梁を沿わせて梁を追加し、羽子板金物で既存梁は固定します。柱が不足している箇所は柱を新たに設け補強します。
古い建物のリフォームでは耐震性を高めるには、必要となる耐力壁を計算し、筋交いなどで耐力壁を配置計画することが重要になります。
今回のリフォームでは、隣地側の外壁部やリフォームしない既存の部屋の内壁には、新たに筋交いを設けることができない箇所が多いので、柱・梁の上から貼る耐震ボードで耐力壁を確保します。
ー吉野石膏タイガーグラスロック耐震壁工法 :タイガーグラスロック耐震壁はタイガーグラスロック(厚さ12.5mm)を用いた耐震リフォーム専用の耐震壁下地ボード
住宅内部からサッシュなどの外気に面する開口部から48%の熱が逃げていきます。
既存サッシュはペアガラス用アッチメントを付けて、単板ガラスからペアガラスに取替え、開口部の断熱性を高めます。
築年数が古いので、電気配線や給排水管などと設備機器も新しく入れ替えます。
既存モルタル部の外壁は、クラックの発生に対応できるリフォーム専用の工法を採用します。
ースズカファイン㈱の外壁塗変システム リメークシステムを採用
始めに既存外壁モルタル部分を高圧洗浄し、クラック箇所はに専用材を充填して補修します。
解体した外壁や新しく設けた外壁は、クラックの出ないノンクラックモルタルで下地をつくります。
その上からリフォーム用弾性塗装を吹付けます。
リフォームに適するリフォーム用吹付塗装の特徴
・ 弾性があるーその後の壁にクラックが出ても追従してくれる
・ 工期が短い
・ 防カビ性・防藻性がある
・ 低汚染性であるー汚れにくい
・ 透湿性ー壁内部の湿気を外部に出せる
コストはかかるが、リフォーム工事ではこうした機能がある塗装を選びます。
<補修前>
<補修後>
塗装の剥がれた金属屋根は葺替えました。
既設の瓦棒葺屋根やスレート屋根が老朽化して葺替えを要する場合、既設の屋根を撤去せず、
その上から新しく金属屋根を葺く工法ー既設屋根のリフォームのカバー工法を採用。
既設屋根の撤去費用が不要で、廃棄物も出ず、工事期間も短縮できるといったメリットがあります。
新築のようにきれいに仕上がりました。
岡山・倉敷を中心に住宅のリフォームの設計・監理に関する相談は
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